チームで認識を合わせること

世にある仕事は、自らの専門知識や技術を駆使して価値を生み出す仕事と、チームワークで協業して成果を上げる仕事にを大きく二つに分けられる、もしくはその組み合わせでできているのではないか。前者で利益を生み出す仕組みを構築し、後者でその仕組みを実行するというイメージが合っているか。

能力のある人間でも、自分ひとりで回せる仕事はこなせても、リーダーとしてチームを指揮して結果を出すことは苦手な人は多い。チームに参加する人にとってその仕事は所詮他人事であり、リーダーと同じ意識と熱量を持つとは限らないからだ。

日本の教育において、リーダーになるために必要な素養を身につけるための科目などはない。リーダーとしての素養は自分の意欲だったり他者とのコミュニケーションを通じて身につけていく、というのが一般的であろう。

チームとして仕事を進めていく上で、まず必要なことは、目的、期限、プロセスなどについての共通認識を持つことだ。リーダーからすると、当たり前のことであってこの作業が直接便益を生み出すわけではないため、できればメールなどにまとめて、メンバーに読んでおいてもらうというのが最も効率的なやり方であろう。しかしながら、このやり方ではほとんどの場合うまくいかない。英語で「Make sure to get everyone on the same page」という便利な言い方があるが、確実に全員の意識を合わせることはとても難しいのだ。

そのためにはまず、リーダーからのメッセージを極限まで簡単な表現にした上で、何度も繰り返しメンバーの意識に擦り込むことが必要となる。これをチームの基本方針としてメンバーが諳んじることができる合言葉のようになるまで刷り込むのである。ミーティング、メール、イベント等あらゆる局面で繰り返し強調するのだ。また言ってるよ、それしか能が無いのかねとメンバーから言われるようになったらしめたものである。

その上で、具体的な事項については、

  • 朝夕10分ミーティングを実施し、課題、進捗などを逐次共有する。よりクリティカルな業務においてはさらに小刻みに行うこともある。
  • メンバーが理解しているかについては、基本的なことから細かいことに至るまで、明示的に確認する。暗黙知はないものと心得る。

このような意識合わせのための基本的な作業を徹底することが必要となる。メンバーから煩わしいと思われないかと心配になるかもしれない。リーダーが熱意を持ってチームのために動いていれば、想いは通じる。逆にリーダーが自分を守るとか、メンバーに仕事を押し付けるという意識があったら、不思議なことにそれもわかってしまうから注意が必要だ。