テクノロジーがもたらすGame Changer

Visibilityには組織の中での目立つ度合いに加えて、仕組みの透過性、目に見える度合いという意味もある。透明性といった方がよいであろうか。

ホリエモンに代表されるテクノロジー系スタートアップ経営者の言う「インターネット等デジタル化による破壊力」の源泉に仕組みの透明性の強化も含まれる。インターネットって今まで紙でやってたことを端末でできるってことくらいでしょ、破壊力って何?て思っていた。インターネットが普及するに伴い芋づる式にあらゆるものがデジタル化された結果、全てが変わったってことだと思う。以下の通り整理する。

  • インターネットは通信の規格を合わせてつなぐネットワーク化を一義的な目的とする。今までバラバラだった組織や個人がネット上でコミュニケーションできるようになる。
  • まずそのメリットを感じたの企業であろう。企業が外部とのコミュニケーションや取引の業務を効率化するためにインターネットを導入する。
  • 外部とコミュニケーションするための情報は社内にある。その社内の情報もすべからくデジタル化される。でないとネットに乗せて運べないからだ。
  • 情報がデジタル化されると、プロセスの自動化が進む。自動化するためにはプロセスは簡単かつ均一になるから、透明度も上がる。そうなると今まで社内のコネや経験、独自ノウハウを武器としていた人たちのオペレーションに価値が無くなった。その人たちがやっていたことを、より安く、早く、簡単にできるようになった。
  • モバイル化が進むと、個人にもネットワークがつながっていく。しかもそれは一部の頑固な人を除けば網羅的なものである。そうなるとデジタル化のメリットは大きくなるためカバーされる領域は飛躍的に広がる。

ネットワークが広がって、デジタル化される領域も広がっていけば、全ての情報を機械が処理できるようになって、既得権益として自分たちのグループで守り見出してきた価値が意味をなさなくなった、ってことだろうか。それは局地的で守られてきた権威の失墜を意味する。

ネットワークではないけどテクノロジーによる権威の失墜をあからさまに見せたのが日本プロ野球に導入されたビデオ判定によるリクエスト制度だ。今まで覆ることのなかった判定が、ビデオを利用して再度検証される。その映像は場内の観客、メディアの視聴者にも公開されるから自明のものとして共有される。明らかな判定の間違いは失笑の的になる。解説者からは「僕の中の心の判定は終わりました。どちらとは言いませんが」と同情めいたコメントが発せられる。そして責任審判は衆人環視の元、かつて自らが下した判定が間違いであったことを認めざるを得なくなる。

絶対であった審判の判定にこんなに間違いがあったのか、今までは薄々感じていたことが試合におけるリクエスト成功数としてデータとして積みあがる過程で、審判の権威は失墜していく。

一方で巨大な権威は、自らを守るためにネットワーク化やデジタル化を機密保持という名目で阻止するのであろう。テクノロジーは、政治における情報の隠蔽、改ざん、不透明な権力の行使をも無価値化することができるのであろうか。