西野監督の決断

テクノロジーは情報のデジタル化とプロセスの自動化を促す。その結果あらゆる局面においてGame Changerが自然発生する。初めからそこまでは考えていなかったけど結果的に社会が変わってしまった。そんな感じなんだろうか。

「結果」は誰もわからない、だから「プロセス」に命を吹き込む。それがサラリーマンの心意気だと思っている。一般社員には結果責任は問われない。でも自分が関与するプロセスにプライドを持ち保証する。その結果責任はマネジメントが担う。

しかしながら組織に指示を出し、結果も勝ち取ったマネジメントの評価が割れている。サッカーW杯日本代表の西野監督だ。対ポーランド戦、スコア0-1の後半残り時間十数分の時点で同時に進行するコロンビア対セネガル戦(スコア1-0)の動向を踏まえ、負けを受け入れ、所謂鳥かごボール回しを展開し勝敗、得失点差ドロー、フェアプレースコアに基づく決勝進出に勝負をかけた。

この決断を支持する意見は以下のようなものだ。

  • 一見安全策と見えるこの選択は、さらに時間が経過しセネガルが得点した場合、取り返しのつかないものとなる。すでに鳥かごボール回しを見せつけた手前、その後猛攻に転じたとしても失笑を呼ぶばかりだし、決勝進出も逃す。その場合の西野監督に対する批判はすさまじいものであろう。そのリスクを受け入れ、決断をしてチームに指示を徹底させ、結果を手に入れた。見事である。安全策ではなく希代のリスクテイカーである。

一方、以下のようなものが不支持の理由として挙げられる。

  • スポーツとして、最後まで勝利を追求すべきだし、興行としても顧客への裏切り行為である。
  • そこまでして決勝進出しなくてよい。攻めて負けるなら本望。

この決断を支持したい。おのずと意見も長文となった。

試合を見ていても、90分間ずっと鳥かごボール回しをやっていたわけではなく、あからさまに始まったのはあくまで最後の十数分。自分にとっては、そこに至る西野監督や長谷部のグラウンド外での話し合いや動き、ピッチの選手たちも最初は戸惑いながらも最後長谷部が入って統制が取れていく、そんなスポーツを超えた組織としての戦術、判断、指示系統の実地適用モデルケースの如く非常に見ごたえがあった。西野監督はコロンビアの得点を知った後、判断を下すまでの数分間で、そこまでの覚悟を持ちえたのか、それともそこまで考えずに見切りで決断を下したのか。非凡なるリーダーの決断の背景や過程は検証に値するし、組織人として参考になるに違いない。