問題と原因と解決

組織には様々な問題が横たわり放置されている。多くの従業員はその問題が存在することを認めながらも、所与のものとして業務を遂行する。問題に対する意識は人それぞれであり、解決をするには通常の業務外で追加の労力が必要となるからだ。

そのため、組織では別途問題解決に従事する要員が配置されることがある。私もそんな仕事をしていたことがある。

具体的な作業は、 問題を識別し、原因を特定し、解決するために必要な対策を立てるという流れで進める。

問題の識別においては、以下の点に注意する。

  • 問題は、誰にとっての問題なのか。組織にとって重要な問題でないのであれば、許容するという選択もある。
  • Aにとっては問題であっても、Bにとっては必要なことである、ということがある。例えば、申請/承認プロセスが煩雑で時間がかかり過ぎるという問題があるとする。これは申請者にとっては、プロセスを丸ごと無くしてしまうということがベストソリューションであるが、事務や経理担当者にとっては業務上必要なデータの源泉となっているかもしれない。その場合はプロセスを丸ごと無くすことはできず、申請者の負担を減らすが、業務上必要なデータは確保する必要がある。問題を正しく識別しなければ、その後の作業の方向性が的外れになる。

根本原因の特定には三回Whyを繰り返すことが必要だとよく言われる。例えば、部屋が汚いことが問題であるとすると、何故部屋が汚いかというと、掃除をしないから。なぜ掃除をしないかというと、面倒くさいから。なぜ掃除が面倒くさいかというと、楽しくないから。では掃除を楽しくするにはどうすればよいか考えるということが根本原因にアドレスすることになるという理屈だ。根本原因にアドレスしないと対応が不十分で問題が再発する恐れがあるということだ。

三回Whyを繰り返すことを原則とした上で、原因の特定に関して以下のような視点が必要だ。

  • 根本原因を深堀りした結果、如何ともしがたい問題に突き当たることがある。例えば、要員の知識不足、能力不足とか。そのような問題の解決は時間とコストが掛かりすぎ、実際にワークしないことがあり得る。その解決方法が効果的であるか、という逆算の視点をもって原因を特定する意識が必要だ。
  • 一方で、解決方法からの逆算が過ぎると、所謂出来レースのような問題解決にしかならないリスクもある。要はバランスが重要だということだ。
  • 根本原因の特定は、悪者の特定であるともいえる。組織内のパワーバランスによるプレッシャーを受けやすいができる限り公平な取り扱いが必要だ。

最後に、解決のための対策について。基本的には根本原因の裏返しなので、根本原因の特定までうまくいっていれば、既に対策のため何をすればよいかについてまで概ね考えが及んでいることになる。

  • 解決策の妥当性の観点。原因にアドレスしていることの説明において、その ロジックに飛躍はないか。
  • 原因にアドレスしているとして、その効果は十分か。例えばエラーに対する解決策としてチェックリストを用意することがあるが、往々にしてチェックリストが膨大になった結果、肝心のチェックが形式的となり形骸化することが多い。
  • 解決策が問題を完全にカバーしているかという網羅性の観点。しかしながら費用対効果の観点から、あえて一部のみ対策を打つというケースもあり得る。
  • 解決策は実行可能であるか。その内容と期日を達成するための作業に要する担当者に対する負荷は高すぎないか。
  • 解決策の担当者は、その人が本来担うべき責任に照らして妥当かという観点。解決策は業務や情報システムの制約に応じて変更が必要になることがある。その場合でも、解決策の要点を外すことはできないから、オリジナル解決策の実行責任の所在が妥当であり、各担当者が自分の管轄についてコミットするということが重要である。例えば情報システムを利用した解決策を採用したとして、担当者にとって本来管轄外のロールであるが、情報システムで自動化できて負荷は高くないので、その人がまとめてやってしまうということを決めたとする。しかしながら情報システムが想定と異なり自動化できなくなった場合に、担当者が本来管轄外のロールであると主張してしまい、その対策が宙に浮いてしまうことがある。解決策を完遂するために、担当者に適切なロールを割り当てることが重要だ。

問題の識別、原因の特定、解決のための対策は、絡み合い有機的に機能する。問題を俯瞰しそれらを体系立てて整理する能力が必要だ。汎用的な能力であるため、問題解決のリードはコンサルタントなど組織の外様であっても可能、公平性という観点ではより望ましいともいえるが、問題の当事者、特に業務に精通したベテランとコミュニケーションを行い、有効なインプットを得る能力も必要となる。対策に魂を込めて、納得感のある解決に導くためにベテランの関与は不可欠であろう。